閑話休題-タシケントの河-村井峯二著に出会って
村井峯二著-タシケントの河
学徒出陣で召集、見習い士官として昭和20年終戦直前 ロシア国境戦線に従軍し、終戦によりロシア軍の虜囚となり中央アジア-タシケントに捕虜として抑留された村井氏の回顧記である。
短期間の促成研修で軍人教育を受けた青年が、運命をかけた前線で職業軍人の将校や士官達とのやりとり、様々な経歴を持つ兵隊たちの生死を左右する前線指揮をとる。戦後生まれにの小生には想像を絶する状況である。
前半部は関東軍の一員として現在の北朝鮮とロシア国境の戦場で、敗走につぐ敗走の状況、後半部分はタシケントの抑留生活を中心に展開する内容である。
村井氏退職の昭和53年、それまで書き溜めてきた記憶の断片を纏め上げ出稿され出版。(作家社)
戦時下、前線での戦況悪化時の人間模様や、終戦により シベリアに捕虜として送られ 中央アジア タシケントで抑留生活を送られた体験談を淡々とした表現で書き記しています。
ロ シア軍の監督官との交流、日本人将校、士官、兵隊たちの人間性を中心とした人間模様や、ロシア人の虜囚日本人観、敗走中の朝鮮人部落での人間的なかかわり の有様、実に素朴なタシケントの民間人との交流、同じ虜囚のドイツ人達との交流や文化の違いによるいざこざ、虜囚生活の潤いとなる虜囚劇団の立ち上げと公 演秘話。
実名も随所に入りリアルな臨場感すら感じる描写。
虜囚とはいえ青年らしい異性への関心事や、リーダーとしての立場と対処法など。
戦争、捕虜、等のキーワードから受ける同種の書物とは趣の異なる視点からの回想記である。
人間を自分史という視点から捉えた戦争体験記というべきか。
完読後の感想
悲惨な戦争体験記であり、決して推奨できる体験でも美化された作文でも無く、実に淡々とした文体で終始一貫して綴られた体験談、適切な表現を思いつかないが何かしらすがすがしいさの様な不思議な気分を味わっています。
ちなみに 村井峯二氏は ジェリーデザイナーのとしてご活躍でSALON BAQ でもお取引のある藤田久美氏の今は故人となられた父君です。ご冥福を祈ります。
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