2008年9月23日火曜日

工芸雑感 2 (文化としての工芸)

農耕文化と町文化
民芸と工芸
元来農耕型村社会であったご先祖様たちは 室町期以降 新興勢力として台頭してきた武士団の隆盛により、その後の日本の基本構造に大きな変化をもたらす事になる。
彼らの出現は公家、地頭社会の崩壊をもたらした事にとどまらす、新しい流通社会、貨幣経済の画期的な発展をもたらす事となる。町人文化、商工業産業の発達である。

それまでの農耕、漁労型の互助思想に加え 蓄財を旨とする商工文化の発生である。
従来の実利中心主義ともいえる農民文化にいわば第三次品質(第一次品質とは 素材
第二次品質とは 用途 と規定 ) 付加価値やデザイン等が加わってきた。ここに工芸が誕生
民芸(農民文化)と工芸(町人文化)の相違はこのように規定、以下工芸の発展とまつわる事柄について検証。

豊かな蓄財によりもたらされた富裕層が誕生した事により、文化としての工芸が誕生するのであるが、それは日本のみに限られたことではなく、世界の人類史の基本でもある。
古代、中世イスラム教文化圏でも中世、近代、キリスト教文化圏においてもその発展自体に特に差異は認められない。
日本の工芸について云えば、工芸美術の誕生と成長は世界規模で普遍であっても、先述のように価値観や美意識には大いなる相違を保ちつつ発展し続けることとなる。

2008年(平成20年)は紫式部の源氏物語が記録上確認されて千年紀である。
5月に京都市文化博物館で開催された-源氏物語千年紀-を鑑賞、平安文化の絢爛さ豪華さと共に、現存する日本の工芸美術のすばらしさを鑑賞する機会に恵まれた。

時代は室町から江戸を経て 近代日本になり明治、大正、昭和と連綿と継承されてきた。
昭和も半ば迄、時代や国家体制の変化にも適応し培われてきた四季の国に日本の工芸文化が大いなる変貌を遂げざるをえない大きな事柄が発生する。
日本の建築とライフスタイルの価値観の大変化である。
日本の家屋、建築は 基本的に 木と土と紙の文化を享受することで成立し発展してきた、大変化は建築構造と変化(尺貫モジュールからメートルモジュールへ)と素材の変化又、工業技術の革新的発展によりもたられた。
すなわち 室内空間の基本構造が アルミサッシの登場と個人レベルの空調機器(エアコン)
の普及により大変化をもたらす。日本は四季の国である。
梅雨と言う雨季を必ず通過するが、従来の建築様式では梅雨時期から夏場にかけては自然の恵みの建築素材は膨張し又、乾燥期である寒気は同様に収縮し四季を乗り切る、自然と共生これが日本の長き伝統、スタンダードモデルであった。
必然的に 外気湿度と内気湿度は同じであり、内気温は妥協できる必要な状態の外気温との差異であった。
自然環境と共生と言う長い歴史と、古来から保ち続けた特有のDNAを保ち続けてきた民族の歴史である。
この建築技法の大変化と生活習慣の変化が画期的に大変化をもたらし皇紀2600年の民族の美意識や価値観を変えてしまうことになりつつある。
自然との共生が必然の多神教の農耕型民族が一神教の砂漠の民や遊牧民の価値観に共通する文化圏に突入したものと思われる。
ペルシャ絨毯などは功罪のうち功の部分で普及しつつある、湿度の高い日本の気象条件と
純木造建築の条件化では普及しえない工芸品であろう、又、罪の部分の代表は掛け軸などの紙製品であろう。適度な加湿と寒暖の中で発展してきた従来の工芸品がその標的になる。
もちろん生活習慣の変化と俗に言う洋風化が変化に大きな弾みとなっている
はんなりとした しつらい 等という単語そのものが失われつつある。
文字文化からビジュアル文化への移行もその一つの表れか 。

0 件のコメント:

Blog Archives